メダリスト誕生の裏にある、選手とコーチの信頼関係

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各地でリオ五輪の祝賀会や報告会が行われていますが、
昨日は、東海大学で、同大学出身(在学&OB・OG)の
リオ五輪メダリスト(柔道と競泳)とコーチ陣による、
「なぜ日本が世界で勝てたのか、強化の裏側を知る」
というテーマの報告会(トークセッション)が行なわれたので、
聞きに行ってきました。

この報告会は、東海大学の在学生や、地域住民の方々に対して、
入場無料で行なわれたもので、広い会場には、
近隣の子供たちや親子連れ、お年寄りの方々も
たくさん来られていました。

まず、リオ五輪日本選手団の副団長も務めた
山下泰裕東海大副学長の選手団代表挨拶があり、
トークセッションがスタート。

柔道の
井上康生先生(男子代表監督)、
塚田真希先生(女子代表コーチ)、
高藤直寿選手(男子60㎏級銅メダリスト)
ベイカー茉秋選手(男子90㎏級金メダリスト)
羽賀龍之介選手(男子100㎏級銅メダリスト)
田知本遥選手(女子70㎏級金メダリスト)

競泳の
加藤健志先生(代表コーチ)
金藤理絵選手(競泳女子200m平泳ぎ金メダリスト)

が、司会者からの質問に
それぞれが答えていくという形で行われました。

井上監督や塚田コーチ、加藤コーチのお話も非常に興味深く、
「なるほど」と感じ入るものでしたが、
やはり、面白かったのは選手たちの話。

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選手たちには、
1)挫折、失敗をどのように乗り越えてきたのか?
2)リオ五輪において、緊張や不安にどのように打ち克ったのか?
3)夢や挑戦について、大学生や小中学生へのアドバイス・メッセージを。
という三つの質問がされました。

全部は、とても紹介できないので、
ユニークなネタと、すごく感心したものを少しだけ紹介します。

会場がア然とする、ユニークなエピソードを披露したのはベイカー選手。
挫折、失敗をどのように乗り越えてきたのか? の質問に、
「挫折はないです。けっこう順調に来ていて。正直、なくてすみません」
と答えて会場をどよめかせ、
オリンピックの最終選考会で負けたことは? という司会者の突っ込みにも、
「いま思えば、オリンピックで金メダルを獲れたので、あれもよかったのかなと。
わりとポジティブなので、普通の人が挫折と思うようなこともそう思わないんですよ」
と大物ぶりを発揮。

さらに、
リオ五輪において、緊張や不安にどのように打ち克ったのか?の質問にも、
「緊張はなかったです。決勝前に吐いたのですが、
それは緊張のせいではなくて、決勝まで時間があると思って
おにぎり2個とバナナ1本食べたのですが、
決勝の時間が早まったために消化できてなくて、このまま5分戦ったら
出てきちゃうかもと思って、吐いてスッキリしました」とのこと。

それに関して、井上監督から、
「ウォーミングアップエリアの真ん中でイスに座り、
他の選手がアップしたり精神集中する横で、ピクニックみたいに
おにぎりやバナナをいくつも置いて食べているベイカーの姿には、
他の選手も驚いていたが、すごいオーラだった」
という仰天エピソードも飛び出し、会場は大爆笑でした。

ちなみに、イスに座っていたのは、
「前日のアップで腰を痛めていて、
イスに座っていると少し楽だったからで、
べつに堂々と食べたかったわけではないんです」
とベイカー選手は弁解していました。

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感心したのは、競泳の金藤選手の話と
大学時代から金藤選手を指導する加藤コーチの話。

加藤コーチは、金藤選手を初めて見たときから
「世界一になれる選手」と才能を見出していたのですが、
当の本人は、自分に自信を持って、
「一番を獲ります!」と口にするような選手ではなく、
地道に、耐え忍ぶようなタイプだったそうです。

金藤選手は、ロンドン五輪を目指していた2010年に腰を痛め、
その後も結果が出ずに「やめたい」という気持ちが強くなり、
加藤コーチに「やめさせてください」と伝えたことがあったそうです。
その時、加藤コーチに
「お前の気持ちなんてどうでもいいんだ。
周りの人はお前のことを考えて、
やったほうがいいと言っているのに、
なぜ、お前は自分のことしか考えられないんだ」
と言われ、納得する気持ちも少しあったため
「わかりました、やればいいんでしょ!」と
半分キレながら競技を続けたそうです。

加藤コーチは、
「親の子育てとコーチの選手育てはたぶん同じで、
どういう場面においても、ボクは金藤理絵を信じ切らないといけない。
選手って金メダルを獲りたいという気持ちはあっても、
獲るためにやらなければいけないことで、やりたくないことがあると思うんですね。
それに怖さや不安もある。
そこでボクが負けちゃいけないという気持ちはいつもありましたね。
(指導者が)選手本人より本人のことを信じ続けなければ、
将来はないんじゃないかと思うんです。
金藤は多少イヤだったみたいですけど、ボクは頑張りました」
と会場を笑わせましたが、
二人の師弟関係には感動さえ覚えました。

リオ五輪直後、井上男子監督の「選手への信頼」が話題になりました。
井上監督は、オリンピック前、報道陣にメダル予想を聞かれても、
「全員が金メダルです」としか答えませんでした。
「選手全員が金メダルを目指して頑張っているのに、
私が金メダル以外の予想をすることはありえません」と。
そして、全員がメダル獲得の快挙を成し遂げました。

指導者と選手の信頼関係。
今回のトークセッションを聞き、
その重要性を改めて感じたのでした。

それにしても、地域住民の皆さんを対象にした
こういうイベントは、ホントに素晴らしい。
親子で来られている方も多かったのですが、
子供たちが大きな夢を持つきっかけになるのではないかと思います。

ひのまるキッズ事務局
林 毅

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