「フランスにおける柔道は、もはや国技である」――ミッシェル・ブルースさんの講演会を聞いて(その2) フランスの少年柔道

ブルース氏

先週の水曜日に続き、フランス柔道連盟副会長ミッシェル・ブルースさんの講演会(主催:日仏会館、パリクラブ)についてお話しします。今週は、フランスの子供たちの柔道について。

フランスで柔道連盟に登録している人口の約50%が11歳未満の少年少女だそうです。柔道は運動神経を発達させるのにすぐれ、同時に行儀作法を身につけることに適した体育教育として、すっかりフランスの人たちに受け入れられているのです。

フランスでは、柔道を普及させる段階で、柔道を習う層の若年化に合わせ、指導方法の改善がなされてきました。修行年数による等級分け(色帯システム)にもフランスならではの工夫がなされ、さらに、指導者たちの指導法においても、ゲーム的な要素を加えたり、学習課題を与えたりして、子供たちが飽きないように工夫されています。

「礼儀」「勇気」「謙虚」「尊敬」「自制」「友情」「名誉」「誠意」という8つの約束事を作り、一つできたら、そのシールをノートに貼ってあげるなど、生きていくために必要な行儀作法を、柔道を通じて、ゲーム感覚で、身につけていくという取り組みをしています。

フランスでは、学校が規律の教育をほとんどしない上に、離婚率が高く、両親がそういうことを教えていられないこともあり、柔道を習って規律を守ることを学んでほしいと考える親も多く、これが、フランスにおいて柔道人口が多い理由でもあるようです。

約束事

話は変わりますが、フランスでは、15歳以下の全国的な柔道大会は行われていません。かつては開催されていたそうですが、指導者が勝たせることに一生懸命になりすぎ、大人と同じように子供を訓練するようになってしまったため、肉体的、精神的に発展途上の子供にとってマイナスであるということで、いまは行われなくなったそうです。地方レベルの大会は今でも行われていますし、試合(競技会)ではなく、別の形での大会は行われています。この大会というのは、順位を決めるものではなく、乱取りをして技や動きを披露するようなもののようです。スポーツひのまるキッズ小学生柔道大会で行っている、受身コンテストや打ち込みコンテストの、フランス版という感じでしょうか。

日本では今、少年指導のあり方、さらに指導者のパワハラ、セクハラなどが大きな社会問題となっています。フランスの柔道教育から学ぶべきことも多いと思いますし、こんな時だからこそ、多くの現場の指導者、柔道家がいろいろな考えを出し合い、よりより柔道界、少年柔道の環境を作っていってほしいと思います。

スポーツひのまるキッズ事務局 林

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