「フランスにおける柔道は、もはや国技である」――ミッシェル・ブルースさんの講演会を聞いて

ミッシェル・ブルース - コピー

昨日、東京・恵比寿にある日仏会館で行われた、フランス柔道連盟副会長ミッシェル・ブルースさんの講演会(主催:日仏会館、パリクラブ)に行ってきました。

今回の来日では、柔道教育のスペシャリストとして、様々なところで講演会をされているミッシェルさんですが、昨日は、「フランスにおける柔道は、もはや国技である」というテーマで行われました。

フランスで、柔道が非常に盛んなことは皆さんご存知だと思います。
連盟登録者60万人というのは、日本の3倍と言われています。ただこれは、普段練習するだけでも登録が必要というフランスと、競技に出る選手や指導者だけが登録を義務付けられている日本のシステムの違いによるもので、柔道をやっている人が日本の3倍いるという単純な数字ではありません。でも、登録には当然ながら登録料が必要で、年会費的なものを連盟に支払っている人が、それだけいるということに間違いはありません。

20年ほど前、のちに世界チャンピオンになったあるスペイン選手にインタビューした際に、「柔道の母国である日本に行ったことがありますか?」と質問したところ、その選手は大まじめに、柔道はフランス発祥のスポーツじゃないのか? と聞いてきました。
これにはホントに驚きました。
でも、逆に言えば、そう勘違いしてしまうほど、フランスでは柔道が盛んであり、今回のテーマの「もはや国技である」というのが決して大袈裟でないことがわかります。

詳細は割愛させていただきますが、今回の講演では、柔道がフランスでなぜ受け入れられ、人気を得ていったのか、その秘密・秘訣を、歴史的な背景なども交え、ミシェルさんが実にわかりやすく説明してくれました。

その最も大きな理由は、柔道が単なるスポーツではなく、人を育てる、教育的なスポーツであることだと言います。そして、フランスに柔道を伝えた先人たちが、上流社会の人たちに対して、護身として優れていることを、巧くプレゼンテーションできたことも広がった理由でした。
1905年ごろ、フランスでは柔道を広めるために、有名な雑誌に広告が掲載され、これによってフランスの重鎮・有名人がこぞって柔道を習ったそうで、その時の柔道場はとてもエレガントで、洗練されたものだったようです。

それから100年以上経ちましたが、フランスでは相変わらず、柔道の人気は非常に高く、柔道の精神性は、ますますフランス人に受け入れられているようです。フランスにおいて、柔道のオリンピック金メダリストや世界選手権チャンピオンはスーパースターであり、子供たちの憧れの存在です。
日本人の金メダリストも、フランス国際大会(現、グランドスラム・パリ)に行くと、周りを子供たちが埋め尽くすほどの大人気で、観衆からも本当にリスペクトされています。
これは、以前に聞いたエピソードですが、井上康生選手が大ケガから復帰し、フランス国際大会で優勝した時には、会場中がスタンディングオベーションをし、井上選手はとても感激したそうです。

今回のミッシェルさんの講演をお聞きし、フランス人がこれほどまでに柔道を愛してくれることを、日本人として素直にうれしく思うとともに、改めて柔道の素晴らしさを痛感しました。そして、それと同時にフランスをはじめ周りからも多くのことを学ばなくてはいけないと感じました。

だいぶ長くなってしまったので、今日はここまでにします。
ミッシェル・ブルースさんの講演ご紹介第ニ弾、フランスの子供たちの柔道に関しては、次回、来週の水曜日に。

スポーツひのまるキッズ事務局 林

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